帝国陸軍兵士の最も基本になる軍装として、歩兵の装備の集め方について、解説してきました。今回は、軍装に欠かせない兵器について説明したいと思います。
現代の日本では、自衛官や警察官を除いた一般人が銃を所持したり携帯したりすることは法律で禁止されています。ただし、警察に申請を行って許可された場合には、狩猟や標的射撃に使用する目的で、散弾銃やライフル銃を所持することが可能です。ちなみに私も20代~30代の頃、クレイ射撃の許可を得て散弾銃を所持していたことがありました。
日本では、拳銃などの小型の銃を一般人が所持することは不可能です。小さな銃は簡単に隠し持つことができ、犯罪につながりやすいからということが理由のようです。散弾銃やライフルも、全長や銃身長が一定の長さより短いものは、所持の許可が下りません。
以上のように、日本では銃や刀剣などの武器の所持や携帯が非常に厳しく制限されています。これらご紹介するものは、日本国内で合法的に所持をすることができますが、精巧に作られたトイガンは、見た目は完全に「非合法」ですので、公共の場でケース等に入れずに所持や運搬をしていると警察に通報されたり逮捕されることになりますので注意をしてください。軍刀や銃剣などの刀剣類も同様です。更には、日本では軍服を着て道を歩いているだけでも一般の人は「怖い」と感じますので、職務質問の対象となります。
日本兵の軍装を楽しむ際に手にする兵器は、主に以下の3つの選択肢があります。
- BB弾を発射できるエアソフトガン
- 装填・排莢などの動作を再現したモデルガン
- 実弾の発射機構を壊した無可動実銃
それぞれに良いところがありますが、エンドコンテンツとして、無可動実銃と実物の軍装品をコレクションするようになる方が多い気がします。私の場合は、軍装でのサバイバルゲームを主に楽しみますので、兵器はBB弾を撃つことができるエアソフトガンを集めています。そのため、この記事ではエアソフトガンとしての入手性や実用性という観点も交えて考察をしたいと思います。
なお、写真を掲載しているものは、全て私のコレクションです。
日本兵装備で使用できるエアガンについて
2010年代の中頃までは、日本兵の携行火器のエアガンはKTWやタナカワークスのものしかなく、性能は良いのですが価格も10万円を超えてしまい、なかなか入手することが厳しいものでした。フルオート射撃のできる軽機関銃に至っては、30万を超える高価なものしかありませんでした。そのため、銃の入手という問題が、日本兵の軍装をしてサバイバルゲームを楽しむ際の最も大きな障害でした。
2010年代後半頃から香港のS&T社が参入したため、銃の入手という問題はかなり改善されました。
歩兵銃および騎銃
エアガンとして入手できる一般歩兵の携行火器といえば、三八式歩兵銃、九九式短小銃、九七式狙撃銃などが挙げられます。これらは複数のメーカーから発売されており、それぞれ特徴がありますので、この項目ではメーカーごとに特徴を紹介したいと思います。軍装としての汎用性を考えると、以下の理由から最初の1挺目は三八式歩兵銃を選択するの無難だと思います。そんなことを言いながらも、私が一番最初に購入したのは九七式狙撃銃でした。
- 九九式短小銃はタナカワークスのガスガンしかない(過去にはKTWからもあったが絶版)ため、入手性が悪い
- 九九式歩兵銃は1941年頃から順次配備されたが、三八式歩兵銃のままだった師団も多いので全期間の軍装に対応できる(ペリリューの第14師団や硫黄島の第109師団など、九九式装備だった特定部隊の再現については考慮しない)
ちなみに、騎銃(騎兵銃)は騎兵、砲兵、工兵、輜重兵、憲兵、戦車兵などが使用しましたので、これらの軍装をする場合に使用します。一般歩兵での使用例もありますので、通常の歩兵が持っていてはダメということはありません。
KTW製エアコッキングガン
実射性能でいえば、KTW製の歩兵銃や騎銃が最高だと思います。バネが強いので、槓桿の操作がかなり重たいですが、初速と命中精度は抜群です。その代わり、価格も抜群で10万円前後します。ちなみに実銃とは異なり、銃の長さは射程当にあまり影響がありません。そのため、歩兵銃も騎銃も同じような射程距離です。
欠点としては、安全子(安全装置)が実銃のように作動させられないこと、構造が実銃とかけ離れているので、分解動作を楽しむことができないことなどがあります。
KTWは生産が不定期で、生産終了になってしまっている物も多いです。直近だと、三八式歩兵銃が2024年1月15日に再販されています。気になる方は見つけた時に迷わず買いましょう。
KTWの九七式狙撃銃。狙撃眼鏡は付属せず、現用品のスコープの取り付け台座付きで、「九七式狙撃銃改」として販売されていました。S&Tから九七式狙撃眼鏡がバラ売りされていたので購入してみましたが、台座の形状が微妙に異なっていてKTWの九七式狙撃銃には取り付けできませんでした。
KTWの九九式狙撃銃で、2005年10月に200挺限定で発売されました。九九式狙撃銃は、九九式短小銃を狙撃銃にしたものです。ヤフオクで他の方から譲り受けました。槊杖が紛失してしまっていますが、屋外では使わない方だったようで、全体的にきれいです。九七式狙撃銃の槊杖をそのまま付け替えられるかと思ったのですが、九七式用は長すぎて取り付けできませんでした。
タナカワークス製ガスガン
タナカワークスからは、三八式歩兵銃、九九式短小銃、三八式騎銃、四四式騎銃などのガスガンが発売されています。初速や弾道性能は正直なところKTWに劣ります。私もタナカワークスの四四式騎銃を持っていますが、サバイバルゲームではなかなか命中を与えられませんでした。
KTWと対照的に、安全子が作動したり実銃のようにボルトを引き抜けたりと、ギミックを楽しむことができます。実射性能よりも操作感を優先する方に向いています。価格はKTW同様に高いです。
KTWに比べると供給も安定していて入手しやすいです。ガスと弾を入れたマガジンを使って射撃する仕組みで、三八式歩兵銃、三八式騎銃、四四式騎銃で、共通で使用できます。
四四式騎銃はタナカワークスからしか発売されていません。ワンタッチで折り畳みができる銃剣が特徴です。サバイバルゲームの場合、やはり長すぎる銃は使いにくいですので、騎銃も1挺持っていると重宝します。騎銃を使用する場合、私は憲兵か戦車兵の軍装で合わせることが多いです。
S&T製エアコッキングガン
2010年代後半から2020年頃にかけて、香港のS&T社が三八式歩兵銃、三八式騎銃、九七式狙撃銃等のエアガンを発売するようになり、KTWやタナカワークスの約半額の値段で歩兵銃を入手することが可能になりました。
私はS&Tのエアガンは所持していませんので、友人に試射させてもらった程度ですが、よい意味でお手頃という感じでした。実射性能もKTWには劣りますが、悪いというほどでもありません。自分でカスタムできる方にとっては、良い素材にもなり得るようです。日本兵でサバイバルゲームを楽しむための選択肢を増やしてくれたという意味でも非常に良かったと思います。
拳銃
拳銃というと将校が護身用に身に着けるイメージがあるかもしれませんが、憲兵や戦車兵などの特定兵科の場合、下士官兵でも拳銃を支給されて装備していました。歩兵の場合でも、軽機関銃や重機関銃の銃手などは拳銃を装備します。
十四年式拳銃
南部十四年式拳銃などと言われますが、十四年式拳銃が正式名称です。マルシンが前期型と後期型の2種類のガスガンを販売しています。下士官兵だけでなく、将校が所持していても問題ありません。日本兵が使用していた拳銃の中で、マルシンの十四年式拳銃が一番入手がしやすいです。
実射性能もなかなかよく、非常に素直な弾道で当てやすいです。ただしガスガンですので、気温が低くなる10月~3月の間は、そのままでは使い物になりません。弾倉を携帯カイロ入りの図嚢などに入れて温めながら携行すれば使用できます。
昔、東京マルイからエアーコッキングの十四年式拳銃も発売されていました。現在は絶版で、稀にヤフオク!などで見かけますが、昔懐かしい以外の理由でこれを入手する必要性はないかなと思います。
二十六年式拳銃
二十六年式拳銃は、明治26年(1893年)制式の回転式拳銃です。ハートフォードがガスガンを発売していますが、時折生産されるのみですので、入手はやや困難です。ヤフオク!でたまに中古品が出回ります。
実銃同様の分解ができることが特徴で、ギミックを楽しむことができます。弾道も素直で当てやすいですが、装弾数も実物と同じ6発なので、サバイバルゲームではあまり活躍の機会がありません。
モーゼルM712
ドイツ製の大型軍用拳銃です。中国軍が大量に使用していたため、日本軍の制式兵器ではありませんが、下士官兵が鹵獲して使用していた例があります。将校が私物として使用している可能性もあります。
モーゼルM712は、マルシンからガスガンが発売されています。実銃と同じく、フルオート射撃が可能という面白い銃なのですが、構造上の問題があり、単発射撃をしている最中に勝手に連射してしまうことがあります。一発ずつ、ガン、ガンと強めに引き金を引くことで、意図しない連射を抑えることができます。
FN ブローニング1910
番外編として、ブローニング1910も持っていますので紹介します。通称「ブローニング拳銃」と呼ばれ、将校および准士官の護身用拳銃としてとても人気が高かった拳銃です。
写真の上がアカデミーのエアーコッキング、下がレプリカ1のガスガン(1988年発売)です。どちらも1990年前後の商品で、非常に古い物なので中古でしか手に入らないと思います。一応修理をして弾は出るようにしましたが、実際のサバゲーで使用するのは難しいです。
軽機関銃
時代や状況にもよりますが、通常は1個分隊に1挺ずつ軽機関銃が配備されていました。九六式軽機関銃や九九式軽機関銃の場合、現実では4名の班員で運用されていました。
自動火器の少ない日本軍にとって、軽機があると心強い戦力になります。サバイバルゲームの場合も、射手と装填手の最低2名で運用すると、火力を発揮することができます。
九六式軽機関銃
九六式軽機関銃は、2009年にKTWから発売されていましたが、既に生産終了してしまいました。当時の価格で30万円を超えるというかなり高額の電動ガンで、現実の日本軍と同様に、自動火器のエアガンが少なかった日本軍サバゲーマーにとって、この電動ガンを持っていることは一つのステータスでした。
そんな状況の中で、2019年にS&Tから新たに九六式軽機関銃の電動ガンが発売されました。当時の定価で12万円と、決して安くはありませんがKTWのことを考えると破格の値段でした。このS&Tの九六式軽機関銃をきっかけに、機関銃手の再現が容易になり、軽機の弾薬嚢や手入具嚢などのレプリカの供給が増えることとなりました。
九九式軽機関銃
九九式軽機関銃は、2010年にKTWされていましたが、現在は生産が終了しています。
S&Tから九九式軽機関銃は発売されていませんが、九六式と九九式は基本構造はよく似ていますので、近い将来発売されることがあるかもしれません。一番の外見上の特徴は、銃口に取り付けるラッパの形をした消炎器なのですが、別売りの消炎器をS&Tの九六式に取り付けることで九九式風にすることは可能です。
ブルーノZB26軽機関銃(チェッコ機銃)
1926年にチェコスロバキアで開発された軽機関銃で、中国軍が使用していたものを日本軍も大量に鹵獲して使用していました。一説によると、日本軍で2万挺のZB26を運用していたとのことです。
ZB26は、アローダイナミックから発売されていて、価格は6万円前後です。S&Tの九六式軽機関銃が発売されるまでは、日本軍装備でサバイバルゲームを行う際に、最も入手しやすい軽機関銃でした。
私は持っていませんので射撃性能はわかりませんが、ネット上のレビューを見ると、日本製のエアガン等と比べると調整が難しい製品のようです。
その他
トンプソン機関短銃
日本軍の兵器としてはやや邪道ではありますが、トンプソンは扱いやすい機関短銃であったため、実際の戦場で日本兵が敵軍から鹵獲して使用しているケースが多々あったようです。サバイバルゲームでの使用を考えると、東京マルイ製のものがお奨めです。価格も3万円台でお手頃、射撃性能も良く、箱から出してそのまま使用できます。海外製のエアガンの場合、調整を行わないとまともに撃てないような製品もあるため、東京マルイのものは初心者でも安心して購入できます。
何よりフルオート射撃ができる電動ガンですので、サバイバルゲームでの実用性は圧倒的です。特に、第二次大戦テーマのサバゲーではなく、一般の定例会に参加する場合には、日本軍の歩兵銃だけでは火力不足が否めません。
東京マルイが商品化しているのはM1A1というモデルで、主にアメリカ軍が使用していました。箱型弾倉が特徴です。M1A1は、日本軍が米軍と対峙した南方の島々や沖縄などの部隊の再現をする際によいと思います。
ちなみに、トンプソンのエアガンは東京マルイ以外の海外メーカーも発売しています。M1928というドラム弾倉のモデルは、主にイギリス軍が使用しました。そのため、シンガポール、ビルマ方面の部隊を再現する際によいと思います。
八九式重擲弾筒
CAWが昔、日本軍の軽迫撃砲である八九式重擲弾筒を販売していました。鹵獲した米兵が膝に当てて発射するものだと勘違いし、ニー・モーターと呼んだという逸話がある兵器ですね。
かなり昔に絶版となり、いまではごくまれにヤフオク!に出てくるかどうかという代物です。出てきても非常に高値で取引されると思います。2015年頃、当時で半年に1回出てくるかどうかくらいでしたが、私も欲しくて、擲弾筒収容嚢や弾嚢などの装備一式を苦労して揃えました。最近、でくの房さんが弾嚢などを製作なさっていて、とても良い出来なのでこちらも手に入れました。
CAWの八九式重擲弾筒は、モスカート使ってBB弾を発射することができます。ある程度の練習が必要で、ゲーム中に敵に当てるのはなかなか難しいです。
まとめ
兵器名 | メーカー | ソース | 概算価格 | 備考 |
---|---|---|---|---|
三八式歩兵銃 | KTW | 空気 | 10,0000円 | |
三八式歩兵銃 | タナカワークス | ガス | 50,000円 | |
三八式歩兵銃 | S&T | 空気 | 50,000円 | |
九九式短小銃 | タナカワークス | ガス | 100,000円 | |
九七式狙撃銃 | KTW | 空気 | 120,000円 | スコープなし、品切れ中 |
九七式狙撃銃 | S&T | 空気 | 100,000円 | スコープ単体で売っているが、KTWには装着不可 |
三八式騎銃 | KTW | 空気 | 10,0000円 | 品切れ中、時々生産される |
三八式騎銃 | タナカワークス | ガス | 90,000円 | |
三八式騎銃 | S&T | 空気 | 50,000円 | 品切れ中、時々生産される |
四四式騎銃 | タナカワークス | ガス | 120,000円 | |
十四年式拳銃 | マルシン | ガス | 30,000円 | 前期型・後期型がある |
二十六年式拳銃 | ハートフォード | ガス | 30,000円 | 品切れ中、時々生産される |
モーゼルM712 | マルシン | ガス | 30,000円 | 品切れ中、時々生産される |
九六式軽機関銃 | KTW | 電動 | 338,000円 | 絶版 |
九六式軽機関銃 | S&T | 電動 | 120,000円 | 品切れ中、時々生産される |
九九式軽機関銃 | KTW | 電動 | 358,000円 | 絶版 |
ZB26軽機関銃 | アローダイナミック | 電動 | 60,000円 | |
トンプソンM1A1 | 東京マルイ | 電動 | 35,800円 | |
八九式重擲弾筒 | CAW | モスカート | 時価 | 絶版。中古が稀に出回る |
脚注
- 「レプリカ」はかつてあったトイガンの卸売業者で、実際の製造はマルシンが行っていた。 ↩︎