今回は、S&Graf製の弾薬盒の紹介と、その修復について書いていきたいと思います。修復についてはちょっとハードルが高めかもしれませんが、こういった工作ができると壊れた実物の修復などに役立ちます。
こちらがS&Grafで初期型の三十年式弾薬盒として販売されている商品です。こちらの弾薬盒一つ特徴があって、写真2枚目にあるとおり、前盒の真ん中の縫い目が1つしかありません。この縫い目は、弾薬盒の中の仕切りを縫い付けているものです。
この縫い目が一つしかないものは、学校などでの教練用と言われていて、実際に兵士が使用していたものはこの縫い目が2つあり、仕切りの革も2枚になっています。中田商店が販売していた弾薬盒が、縫い目が1つだけの教練用タイプでしたので、S&Grafの弾薬盒は中田商店製を参考に製作したのではないかと思われます。
HIKISHOPの弾薬盒は縫い目が2つありますので、初期型の弾薬盒を購入するのならHIKISHOPの方が良いと思います。私も詳しくわかっていない頃にS&Graf製を購入してしまい、最近はあまり歩兵の小銃手の軍装をしていなかったので、買い直しをしていません。
本来でしたら、これで紹介は終了ということになってしまうのですが、それでは味気ないので、S&Grafの弾薬盒を素材にして工作の練習をしてみようと思います。
私のS&Grafの弾薬盒なのですが、ご覧の通り糸が毛羽立ったり、ほつれたりしてきています。革製品の場合、蝋引き糸という蝋が塗られた糸で縫い上げるのですが、この商品は普通の糸が使われています。また、写真を撮り忘れてしまったのですが、蓋と本体を繋いでいる蝶番の役割をしている革がちぎれてしまったため、修理する必要が発生しました。
一か所だけ縫い直すと糸の色が異なって見栄えも悪くなるので、思い切ってすべて分解して縫い直すことにしました。箱ものを縫う練習にもなるかなと思った次第です。
まずは分解していきます。接着剤は使われておらず、糸を切るだけで分解できました。
両サイドと仕切りの革が大きく歪んででいたため、水に濡らしてから真っすぐに整えました。革は水に濡らすことで曲げたり伸ばしたりできます。
まず最初に、帯革に通すためのループを縫い付けました。比較的小さな箱なので、縫っていく順番をよく考えないと干渉してしまって組み立てられなくなります。
仕切りの縫い穴を修正しました。左が作業前、右が作業後です。かなり雑で、底の方は穴がありませんでした。
中央の仕切りの前面側(ループの反対側)だけを先に縫い付けます。
蓋と本体を繋ぐ革を縫い付けます。これを先に縫っておかないと付けられなくなります。
仕切りの後ろ側を縫います。短い縫い針を使わないと厳しいです。この仕切りさえ縫えれば、あとは難しくありません。
側面は既存の穴に沿って縫っていくだけですので、比較的簡単にできます。
蓋を縫い付けたら完成です。あまり変わり映えしないかもしれませんが、シャープな印象になったと思います。
写真を撮り忘れてしまいましたが、蓋も同じように全部分解して縫い直しています。蓋は構造も簡単で縫いやすいので、最初に練習としてやってみると良いと思います。
以上、S&Grafの弾薬盒の紹介とレストアでした。
S&Grafの弾薬盒は教練用の形状をしているのですが、価格的にはお財布に優しいです。サバイバルゲームなどでカジュアルに日本兵の軍装を楽しみたい方には悪くない選択肢だと思います。
HIKISHOPから直接購入する場合、昨今の円安の影響もあり、送料も含めるとかなり高くなります。HIKISHOPでまとめ買いする場合は直接購入した方が安いですが、特定の商品だけ欲しい場合は、HIKISHOP製品を取り扱っているPKミリタリアさんなどで購入すると良いと思います。