九六式防寒帽

  • 投稿の最終変更日:2025年11月26日
  • 投稿カテゴリー:被服 / 装備
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防寒帽は、特殊地方用被服の防寒被服に分類されており、その仕様1は大正14年に制定され、昭和7年、昭和11年、昭和15年、昭和18年に改正されています。

今回は、昭和11年制定の九六式防寒帽の実物を比較していきたいと思います。
先日、まとまった数の防寒帽を入手する機会があり、様々な年代の九六式防寒帽が手に入りましたので、記録としてこの記事に残しておきたいと思います。

昭和13年製 大阪陸軍被服支廠 中号

初期の昭五式軍衣のような黄色味がかったカーキ色。少し虫食い穴があるが、星章も綺麗に残っている。毛皮は短毛仕様。

昭和14年(16年?)製 陸軍被服本廠 号記載なし

額の部分の毛皮に抜けが見られるが虫食いもなく良好。色味はやや暗めのカーキ色。毛皮は長毛仕様。号数の記載がないが、他のものとの比較からおそらく中号だろう。

顎紐は耳の穴から外に出して後ろで結ばれており、当時の所有者がやったと思われるのでそのままにしている。邪魔なので後ろで結んでいたのではないだろうか。

内張が二重となっており、一枚めくった下に昭16という印が押してあった。内張が昭和14年で、本体が昭和16年ということだろうか。

昭和16年製 大阪陸軍被服支廠 号難読

色味は茶色系。良く使い込まれており、多少毛皮の抜けがあるが程度は良好。号数が読めないが、他のものとの比較からおそらく中号だろう。

内張の生地が外されているので、内部を観察することが可能。内張を外して洗濯していたのだと思われる。「シサ 池田石松」との記名あり。

昭和18年製 大阪陸軍被服支廠 中号

昭和18年らしい濃緑色。毛皮の抜けはないが、内張が若干黄ばんでいるので使用されているかもしれない。毛皮は短毛仕様。

本体と同一生地で作られた鼻覆が付属している点が非常に珍しい。鼻覆は、本来一緒に支給されているはずだが、ほぼ紛失してしまっている。

昭和18年製 大阪陸軍被服支廠 小号

こちらも濃緑色。内張も綺麗なことから、おそらくデッドストック品。短毛仕様で、検定印が簡略化されている。

こちらにも同一生地で作られた鼻覆が付属している。

鼻覆

鼻覆の縫製はわりと雑。中央部分にはぐるっと針金が入っている。耳に掛ける紐は、上側が長く、下側が短くなっている。紐の結び方はオリジナルのまま。上の方は長さ調整可能な結び方がされており、下の方は通常の固結び。

この鼻覆が残っている実物は少ないので、鼻覆単体でもかなり高価。

複製防寒帽(野狸製)

野狸さんが防寒帽のレプリカを出していらっしゃったので、軽くご紹介しておきます。以下の写真で、真ん中が野狸さんのレプリカ、その左右が本記事で紹介した実物です。

野狸さんのレプリカは昭和13年製のような明るいカーキで、昭和14年製のような長毛仕様となっています。内張も昭和14年製のつくりを正確に再現されています。もちろん鼻覆付です。

脚注

  1. 陸軍被服品仕様聚(第2回追録) 上巻/第1編 成品被服/第4款 特殊地方用被服」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C14010286100、陸軍被服品仕様集 追録(第2回) 昭和18.1~4(防衛省防衛研究所) ↩︎