今回紹介するのは、九六式軽機関銃または九九式軽機関銃を装備している軽機班の一番銃手、すなわち軽機関銃の射手が携行していた手入れ具嚢です。
実物、中田商店製のレプリカ、そして実物を元に私が作成したレプリカの製作過程を紹介していきます。
九六式軽機関銃または九九式軽機関銃の射手は、今回紹介する手入れ具嚢と長方形の属品嚢とを帯革に通し、背中から左腰の辺りに装着します。着装例は中西立太氏の「日本の軍装」の15ページの絵が参考になります。
実物手入れ具嚢
こちらが実物の手入れ具嚢です。全体的に薄汚れてくたびれていますが、破れやほつれはありません。
嚢だけ入手したため、中身は空っぽです。革のベルトも柔軟でひび割れもありません。
構造的にはシンプルなのですが、細部はなかなか凝った作りになっています。尾錠が止めてあるところの革は、先端が薄くなるように漉き加工がされています。裏側の大きな一枚革も、縁の部分が丁寧に磨かれています。
複製品を作る際には、この辺りも再現していきます。
中田商店製レプリカとの比較
実物と中田商店のレプリカとの比較です。実物を入手するまではこのレプリカを使用していました。このレプリカ自体も既に絶版で、ヤフオクでもなかなかお目にかかることはありません。
両者を比較してみると、縦横の長さが若干異なります。また、蓋を止めるベルトと尾錠のサイズも異なっています。
とはいえ、当時のこういった軍装品はほぼ手作りですし、仕様も大雑把なものですので、中田商店のレプリカが必ずしもに間違っているとは言えないと考えます。この寸法の実物が存在していてもおかしくないように思います。
レプリカの作成
せっかく手入れ具嚢の実物を入手できましたので、複製品を作成してみることにしました。縦長の属品嚢のレプリカは時折見かけますが、手入れ具嚢はほぼ見かけませんので、欲しい方もいらっしゃるのではないかなと思った次第です。
まずは帆布でできている部分です。実物はかなり汚れて黒ずんでいますが、汚れの少ない部分の色味を参考に生地を選定しました。この手入れ具嚢の他にも、当時の帆布製の軍装品を持っていますので、それらの色味も参考にしています。
あちこち実店舗を回ったり、ネットショップのサンプルもたくさん取り寄せたのですが、なんとか満足のいく色味のものを見つけることができました。
革の部品の切り出しと染色です。革の厚みは実物と同じとし、縫い穴のピッチも実物同様になるように再現しています。尾錠も実物と同じ形状の細身のものを頑張って探しました。
実物は、経年変化により革が真っ黒になっていますが、レプリカはやや使い込んだ程度の色に染めました。染色の工程もかなり手間がかかるため、量産する場合には生成りのままで染めないかもしれません。
実物はもちろん染色はされていませんので、当時、新品を支給される場合は生成りでした。革の部分は、汗や雨、日光に当たることで茶色く変色していきます。
帆布はミシンで縫えるのですが、皮革部分は総手縫いです。結構固いので、1つ作っただけで指にタコができました…
ということで完成です。本業はサラリーマンをしていますので、一つ作るのに毎晩深夜作業をして3日くらいかかりました。我ながら、なかなか良くできたと満足しています。
スマホなどのちょっとした小物を入れるにもちょうどよいサイズなので、エイジングをかねて普段使いをしても良いかもしれません。
実物と並べてもほぼ違和感はないかなと思います。
属品嚢と手入れ具嚢は統一感があった方が格好いいので、そのうち属品嚢も作りたいです。
どれくらい需要があるかわかりませんが、何個か製作してとヤフオクに出品していこうと思います。気になる方はよろしくお願いいたします。