前回の記事に引き続き、今回はS&Graf製携帯天幕の紐を交換し、ディテールアップを行います。
実物をお持ちでない方でも、この記事を参考にして自分で改修できるよう、寸法などの数値も記載しています。
作業の際は、『携帯天幕制式及使用法』1の末尾にある図面も併せてご参照ください。
まずは完成写真をご覧ください。左側の蹄係が1本隠れていますが、ご愛敬です。
改修前と比べると、より実物に近い見た目に仕上がったと思います。
ロープの準備
ロープには麻製のものを用意します。ただし、一般的な麻ロープは繊維の毛羽が多く出てチクチクするものがあるため、こうしたものは避けましょう。表面が滑らかで「リネン」とや「マニラ麻」表記されているロープを選ぶのが良いと思います。
実物のロープはかなり硬く、引っ張ってもほとんど伸びません。可能であれば、実物を触りながら選べるとより確実です。
ロープの色は生成りです。実物はややくすんだ天幕に近い色合いですが、これは恐らく汚れや経年変化によるものでしょう。なんせ80年以上前のものですから。
染めて色を近づけたい場合は、コーヒーを使うといい感じになるのではないかと思います。
ちょうど良い麻ロープが見つからない場合は、代用品として綿ロープを使うのも一つの手です。
綿ロープは、見た目だけでは麻か綿か判別しにくいため、天幕として張らずに羽織るだけでしたら問題ありません。ただ、綿のロープは耐久性が低く、強い力をかけて引っ張ると伸びてしまうため、実用したい方は麻のロープが必須です。
ロープは2種類の太さを用意します。太い方は4mm、細い方は3mmです。
私は5mmと3mmで試しましたが、やはり4mmの方がより実物に近かったかなと思います。
見た目ではほとんどわかりません。
以下は私が使用したロープです。点数を付けると、65点くらいでしょうか。もう少し良いものがあると思います。このロープはリネン麻30%とアクリル70%の混合なので、あまり納得はしていないのですけれど。
周囲にロープを多く扱うお店がないため、今回はネットで購入しましたが、商品写真だけでは品質の善し悪しが判断しにくいですね。
数種類購入して良さそうなものを選んだのですが、もう少し時間とコストをかければ、さらに良いロープが見つかるかもしれません。
太いロープは、四隅と各辺の中央に使用します。
細いロープは、蹄係、頸紐、張綱に使います。携帯天幕1張分のロープを交換する場合、少し余裕を見て、太いロープは10m、細いロープは15mあれば十分です。
正直、自分でもまだ満足はしていないので掲載を迷いましたが、良いロープが見つからない方の参考になればと思い、次善策として私が使ったロープを紹介します。あくまで「これがベスト」というわけではありませんので、その点はご了承ください。
写真に写っているのはL(5mm)とS(3mm)ですが、M(4mm)とS(3mm)の組み合わせの方が実物に近くおすすめです。
長さも、1巻きずつ購入すれば1張分には十分です。
四隅のロープ
まずは四隅のロープを付け替えます。「携帯天幕制式及使用法」のスライド14の右下の図Aを参照してください。ロープの通し方と寸法はこの図に記載されていますので、この通りになるように調整します。
結び目の部分は以下のようになっています。最初の3枚が実物、最後がS&Grafです。S&Grafも結び方は正しいので、このまま参考にしつつ置き換えをします。ロープの長さは適当なので、仕様書の通りに結び目を含めて全体が590mmになるように調整します。
結び方がわかりやすいように、写真を掲載しておきます。こちらを参考にしていただければ、同じように結べると思います。
以下は実物です。ロープは大体21cm飛び出していますので、長さの参考にしてください。
四辺中央のロープ
次に、4辺の中央に結ばれているロープを付け替えます。S&Grafの天幕の場合、そもそも2辺にしか付けられていません。「携帯天幕制式及使用法」のスライド13の右下の図Bを参照してください。
ロープの状態が後期型の方が良かったため、後期型の写真を用いて図示しています。ロープの通し方および長さの参考にしてください。ロープの結び方は四隅と同じです。
画像1のように、ロープを通す2つの穴のうち、片方の側に結び目がくるように通します。どちらの穴に結び目がくるかは、画像3枚目の赤丸で示しました。私の手元にある実物2枚はいずれもこの位置で統一されており、このルールで作られていたようです。
蹄係
天幕同士をつなぎ合わせる際に使用するロープ、「蹄係」です。「携帯天幕制式及使用法」のスライド13の左下の図Dを参照してください。
このロープは長さが重要で、長さを間違えると天幕の連結に使用できません。ちなみに、S&Graf製のものは長すぎるため、連結する際は短く調整する必要があります。
蹄係は変わった結び方がしてあって、表と裏に結び目があります。表にも裏にも蹄係を引っ張り出せるようにするための仕組みです。
実際に蹄係を裏から表に引っ張り出す様子が以下の通りです。動画にしてアップするのが面倒だったので、連続写真で撮ってあります。
蹄係を使って天幕を結合すると、以下のようになります。この状態にするために、ロープの長さが重要なのです。
結び方ですが、まずは以下のようにロープを通します。右側のハトメがこれから結び目を作る部分で、左側のハトメはすでに装着済みの状態です。
長さを調整しながら、隣のロープに通しておきます。実際には、もう1枚の天幕のハトメに通してから連結することになるため、少し余裕を持たせておかないといけません。その点に注意してください。
ロープを通したら、裏も表も以下のように結びます。上の写真とは向きが逆なので、少しわかりにくいかもしれませんが、すみません。
張綱
天幕を張る際に使ったり、雨覆として使う際に腰紐として使う張綱です。「携帯天幕制式及使用法」のスライド14の図F´を参照してください。
張綱の長さは2,050mmで、片方が房になっており、もう片方はループになっています。
房の方は以下のように作ります。手縫い糸でぐるぐる巻きにして、玉止めをして固定します。あとは、先端を整えるだけです。
ループの部分は、さつま編みがされているように見えたので、YouTubeでやり方を調べながら作ってみました。うまくできるようになるまで、何回か練習しています。
「さつま編み」または「アイスプライス」で検索をすると動画がたくさん出てくるので、調べてみてください。
編み終わりの部分は、房と同じように糸でぐるぐる巻きにして処理します。写真を撮り忘れたので、最初に掲載した張綱の完成写真を参照してください。
完成した張綱は、以下のように天幕に通します。張綱は固定されておらず、通してあるだけです。そのためか、実物の天幕では張綱が残っていないものがほとんどです。
頸紐
次は、天幕を雨覆として使うときの頸紐です。「携帯天幕制式及使用法」のスライド14の図Fを参照してください。頸紐の両端は、張綱と同じように房を作り、長さは1060mmにします。
以下の写真で赤丸を付けた中央部分を縫い付けて、頸紐を固定します。私の実物天幕は2つとも縫い付けられていたので、紛失防止のためにこうしてあるのだと思います。
これでS&Graf製携帯天幕の改修は完了です。
張綱のループ作りが少し厄介ですが、ロープの長さや結び方も紹介しましたので、ぜひご自身の携帯天幕で試してみてください。
脚注
- 「携帯天幕制式及使用法」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C08070626900、明治36年 陸達綴(防衛省防衛研究所) ↩︎





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