実物の九一式手榴弾の紹介です。
安全化処理によって中の火薬や雷管は取り除かれ、弾体に2か所の穴が開けられています。撃針などの部品もあり、塗装も当時のものが残っていて状態はとても良いです。
2001年の9.11以前は安全保障に関する規制が比較的緩やかで、安全化済みの軍用品が国境を越えることも難しくありませんでした。この個体も、その時期に海外から里帰りしたものではないかと思います。
9.11以降、軍事転用可能な物品に対する各国の輸出規制が大幅に強化され、安全化済みの武器や爆発物も税関や航空貨物の審査が厳しくなり、国境を越えることが難しくなりました。コレクターアイテムを直接狙ったものではありませんが、結果としてこういった里帰り品はほぼ出てこなくなっています。コレクターからの放出を待つしかないのが現状です。
九一式手榴弾は手投げのほか、十年式擲弾筒や八九式重擲弾筒から発射することもできました。状況によっては、ブービートラップとしても使用されました。擲弾筒で使用する際には底部に補助推進用の装薬室を取り付ける構造になっていますが、この個体はその装薬室が欠品しています。
信管の遅延時間は通常7~8秒で、擲弾筒での使用を前提とした設定でした。ただし実戦では、この猶予時間の長さが仇となって敵に投げ返されるケースがあったようで、後に4~5秒に短縮する改修が施された個体も存在します。
改修された個体では、底部の雌ねじが削除され、擲弾筒への装填を防ぐための張り出しが追加されています。この個体にはそういった改変は見当たらないので、標準的な7~8秒型だと思われます。
底部は最終工程で削り出されたとみられ、塗装は施されておらず、金属地が露出した状態でピカピカです。
弾体に刻まれた溝は手作業で削り出されたとみられ、各ブロックの大きさや溝の角度にもばらつきが見られます。
蓋を開けると、信管周りの部品もほぼ揃っています。
銅製の薄い筒が起爆筒で、この内部に手榴弾を起爆するための火薬が収められています。
起爆筒を取り外すと現れる真鍮製の筒には、内部に細い孔が設けられており、この中に遅延発火用の火薬が充填されています。この火薬が7~8秒かけて燃焼し、最終的に起爆用の火薬へと伝火します。
さらに、その先端に位置する部分が発火用の信管です。
信管部分を分解していきます。
安全栓を抜き、被帽(安全キャップ)を外した状態です。
中央からわずかに露出しているのが撃針体です。
撃針体を取り外し、上方から内部を確認した状態です。
本来であれば、この位置には雷管および撃針を保持するためのばねが収められています。
雷管は除去されていますが、ばねも欠品しています。
安全栓、撃針体、信管本体です。撃針体からは短い撃針が突出しています。信管本体には「昭十六」「東」との刻印が確認できます。
日本軍の手榴弾は、安全栓を抜いた後、信管頭部を硬い物に打ち付けることで作動させる構造となっています。鉄帽や編上靴の踵などに打撃を加えて着火します。信管にはガス抜き孔が設けられており、点火後にはそこから煙が噴出するそうです。
一方、擲弾筒で発射する場合は、発射時の衝撃によって信管が作動する構造となっているため、あらかじめ信管を叩いてから装填することはありません。
構造が分かりやすいよう、部品を改めて配置してみました。
信管には、大きな孔が1つと、小さな孔が2つ設けられています。大きな孔は、先に述べたガス抜き孔で、未使用の状態では丸い銀色のシールのような錫箔が貼られていました。
一方、小さな孔2つは信管の中まで貫通しておらず、浅い凹部となっています。これらについては手元の図面にも記載がなく、その用途は判然としません。
撃針の構造が分かりやすいように配置してみました。
撃針体には溝が設けられており、この溝に安全栓が掛かることで撃針体の作動が拘束され、雷管を叩けない構造となっています。
1枚目の写真を見ると、撃針体にはマイナスねじ状の一文字の溝が確認できます。実は、撃針の根本はねじになっていて、製造時は撃針の先端は撃針体の中に隠れています。九一式手榴弾を使用する際には、事前に被帽を外し、このねじを締め込むことで撃針体内部の撃針が前進し、外部に突出する構造となっています。
このねじを回すための専用工具は「撃針螺廻」といいます。
参考として、陸軍歩兵学校編『擲弾筒取扱上の参考』より、曳火手榴弾の該当ページを掲載しておきます。構造や作動の理解の一助となれば幸いです。
早速、3Dスキャナーを使用して形状データを取得しました。
私が使用しているのは、Revopoint Metro Y Pro というスキャナーで、公称0.01mmの精度で物体の形状を取り込むことができます。
扱いには多少コツが必要ですが、徐々に慣れてきており、安定してスキャンできるようになってきました。
3Dスキャナーで取得したデータをCADに取り込み、その形状を基にトレースしながら再設計を行います。
スキャンデータは寸法精度自体は非常に高いものの、細部のモールドが潰れてしまう場合があるため、改めて設計し直すことで、より精度の高い形状に仕上げることができます。
形状確認のために出力したテストピースの数々です。
手榴弾型のBBボトルとして使用することを想定し、信管部分をBB弾の注ぎ口として機能するよう設計しています。
キャップの固定方法がなかなか定まらず、さまざまな方式を試しながら検討を重ねました。
マルチカラー印刷で仕上げた試作品です。形状については、実物と並べても大きな違和感はないレベルに仕上がったと思います。
ただし、やはり3Dプリント品である以上、質感にやや玩具的な印象が残るのは否めません。現在は0.4mmノズルで出力していますが、0.2mmノズルに変更すれば造形時間は増えるものの、積層痕をより目立たなくすることができるはずです。
また、3Dプリント製の手榴弾はすでに一定数出品されているため、このままでは差別化が難しく、価格競争に陥る可能性もあります。
そのため、表面処理や塗装に手間をかけ、より実物に近い質感を追求する方向で仕上げた方が、自分の強みを活かせるのではないかと考えています。



























