軽鉄条鋏携帯袋 乙

  • 投稿の最終変更日:2026年5月9日
  • 投稿カテゴリー:器材
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今回は軽鉄条鋏携帯袋(乙)を紹介します。旧字では「軽鐡條鋏携帯袋」と書きますが、本記事では新字を使用します。なお「鐡」については、当時の一次史料でも「鉄」と表記されている例があります。

軽鉄条鋏は、近接戦闘器材に分類される装備品です。近接戦闘器材には、防楯・地雷検知器・火炎発射器といったいかにも戦闘向けのものが並んでいます。また、防電手袋・防電靴・九八式防電具・九八式電圧検知器といった装備も見られることから、通電鉄条網への対策も想定されていたと考えられます。こちらの史料1には近接戦闘器材の一覧と購買単価が記載されており、参考になります。

以下が今回紹介する携帯袋です。一番右端の少し黄色っぽい色のものが中田商店製のレプリカで、その他が実物です。最近まとまった数の携帯袋が見つかったらしく、ヤフオクでもよく見かけます。一つ購入したところ、出品者の方は軍隊物は専門外だったようで、数が捌けずにお困りの様子だったので、まとめて引き受けました。現在、私の元には7つの携帯袋があります。

こういうものは出ているうちに手に入れておかないと、何年かしてからやっぱり欲しかったと思っても後の祭りです。手に入れられる機会に買っておくのがセオリーです。

携帯袋を並べてみたところです。重ねて保管してあったらしく、裏側に、他の携帯袋の革ベルトの跡がついているものもあります。

軽鉄条鋏携帯袋には今回紹介している乙の他に甲もあり、甲の方には向かって左側に刃の交換に使用するスパナを入れるポケットが付いています。

この軽鉄条鋏は、歩兵の1個分隊に1つ程度支給されていたといわれています。昭和19年5月のとある中隊の兵器員数表2を見ると、各小隊・分隊の一人一人がどの武器や器材を携行していたかまで記載されており、非常に興味深い史料です。この中隊には軽鉄条鋏が甲5、乙24、九三式1あったと書いてあります。中隊の火器は軽機関銃10、擲弾筒9、重機関銃3で、第一小隊から第三小隊が小銃小隊と思われ、各分隊に2~3個の軽鉄条鋏が支給されています。装備していた兵士の階級をみると、二等兵、一等兵、上等兵という感じで、階級はあまり関係なく、兵が持つようです。

蓋のところに「軽鉄条鋏携帯袋乙」と記載されています。全く同じ字体なので、スタンプで押されているようです。「軽」の字が薄れている個体が多いです。

中には小さいポケットがあります。この中に、鋏の替刃を収納します。

中田商店製のレプリカとの比較です。帆布が黄色っぽい方がレプリカです。大きさや形状は非常によくできています。

パッと見てわかる違いは2点で、ひとつは革ベルトの縫い付け方の違い、それからバックルが実物は鉄製ですがレプリカは真鍮製です。このような収容嚢や携帯袋のバックルは実物では鉄製なのですが、レプリカの多くは真鍮で作られています。

中田商店のレプリカには軽鉄条鋏も付属しています。実物の軽鉄条鋏も数度オークションで見かけましたが、数万円では買えるレベルではなかったので、とりあえずレプリカで満足しています。

鋏の先端にあるねじを緩めると刃を交換できる構造になっています。レプリカのため刃は鋭利になっておらず、実際に鉄線を切断することはできません。

柄はねじ止めするようになっています。

鋏の真ん中の関節部には、ロック機構のようなものがついており、これを噛ませると刃が閉じなくなります。

以上、軽鉄条鋏携帯袋(乙)の紹介でした。なかなかまとまった数が出てくることはないと思いますので、記録として記事にしました。

さすがにこんなにたくさんは必要ないので、いくつか手放そうと思っています。実物ではありますが、中身の軽鉄条鋏がないと使いにくいでしょうから、そのうち3Dプリンタで鉄条鋏でも作ろうかなぁと思っています。

脚注

  1. 近接戦闘器材」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C12121780000、単価表 昭和15年~18年(防衛省防衛研究所) ↩︎
  2. 昭和19年5月 リ隊兵器一覧表 兵器隊」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C14010998800、リ隊兵器一覧表 昭和19.5(防衛省防衛研究所) ↩︎