衛生兵(防暑襦袢)

  • 投稿の最終変更日:2024年2月19日
  • 投稿カテゴリー:着装例
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概要

防暑襦袢(ぼうしょじゅばん)を使用した陸軍衛生部下士官兵の着装例です。下半身は九八式夏袴を着用しています。この例は階級が軍曹ですので、陸軍衛生下士官です。

日本陸軍の南方用被服には、以下の3種類があります。

  • 防暑衣:開襟にして着用できるジャケットのような形状で、脇の部分に通風孔がある
  • 防暑略衣:半袖の開襟シャツのような形状
  • 防暑襦袢:七分袖の開襟シャツのような形状

防暑襦袢は、中田商店、HIKISHOP、S&Grafからも販売しており入手が容易で、真夏のサバイバルゲーム等で重宝します。私が持っているのはこれらの3社のものではなく、野狸さん(鬼塚堂さん、桜井さんとも)という個人でレプリカを研究開発されている方の製品です。

衛生兵は、医薬品や包帯などの入った赤十字の鞄を携帯し、赤十字の臂章(ひしょう)を左腕に縫い付けます。この赤十字の鞄については別記事で詳しく紹介していますが、この着装例は下士官ですので、四角い赤十字章がついた医療嚢(醫療嚢/いりょうのう)を身に着けています。この医療嚢は、中田商店のレプリカです。

着装方法

兵の場合は包帯嚢(繃帯嚢/ほうたいのう)を、下士官の場合は医療嚢を携帯します。服装規定上、衛生兵は雑嚢を持たないことが基本になっていますが、実際の動員部隊では所持させていることもあるようです。雑嚢を装着する場合は、水筒と同じく右肩から掛けていたようです。

衛生兵の標準的な被服の着装方法は、以下の通りです。

  1. 水筒を右肩から左尻に掛ける。水筒の釣紐バックルが身体の前にくるように水筒を前後入れ替えておく。
  2. 銃剣を通した帯革を締める。
  3. 医療嚢(包帯嚢)を左肩から右下に掛け、専用の細い帯革で医療嚢を身体に固定する。医療嚢の帯革は兵用帯革の下に締める。医療嚢は、状況に応じて身体の前に動かしたりして使用する。
  4. 被甲嚢(ひこうのう/ガスマスクバッグ)を右肩から左下へ掛ける。

使用した被服

  • 官給略帽(レプリカ/古鷹屋)
  • 防暑襦袢(レプリカ/野狸)
  • 九八式夏袴(レプリカ/S&Graf)
  • 軍曹階級章(レプリカ/中田商店)
  • 帯革(レプリカ/S&Graf)
  • 九四式水筒甲型(レプリカ/HIKISHOP)
  • 四十年式医療嚢(レプリカ/中田商店)
  • 赤十字臂章(レプリカ/HIKISHOP)
  • 三十年式銃剣(レプリカ/ウインドラス)
  • 九五式被甲嚢(レプリカ/野狸)

よもやま話

私の祖父は1944年頃に19歳で招集され、当初歩兵の機関銃中隊に配属されていましたが、途中で志願して衛生兵の教育を受けていました。志願した理由は、機関銃中隊は荷物も多くて辛く、衛生兵は楽だと聞いていたからだとか。祖父は、私が中学生の頃に亡くなってしまったので、あまり詳しい話を聞くことはできなかったのですが、祖父の証言によると護身用に拳銃を支給されていたそうです。階級は二等兵でした。

当時「どんな拳銃だったの?」と祖父に尋ねたところ「小さくて古い感じのリボルバーだった」という答えでした。今だったら「拳銃嚢つけてた?」と聞くのですが、当時はそこには気が回りませんでした。本土決戦に備えていた部隊ですので、衛生兵といえども武器を取って戦うようにということだったのかもしれません。