昭和17年制 防暑衣

  • 投稿の最終変更日:2026年4月18日
  • 投稿カテゴリー:被服 / 軍服
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今回は、昭和17年に制定された下士官兵用の防暑衣を紹介します。

また、妹が洋裁検定1級を有するなど裁縫に精通していることから、私の所蔵する実物をもとにレプリカの製作も行いました。本記事では、そのレプリカについてもあわせて紹介します。

なお、レプリカ防暑衣については、ご希望の方に向けて受注製作・販売を予定しています。工場生産ではなく、一着ずつ手作業で製作しているため、ご注文からお届けまでに数ヶ月程度のお時間をいただく場合があります。あらかじめご了承ください。

実物防暑衣

まずは実物の紹介です。防暑衣は、昭和5年制定の後、昭和13年、昭和17年と二度の改正が行われています。

まず、昭和5年制防暑衣は、昭和五式軍衣と同様に鍬形の襟章を付け、開襟状態にすることができます。階級章は肩に佩用します。

次に、昭和13年制防暑衣1は九八式夏衣に形状が似ていますが、開襟での着用が可能である点が特徴です。また、襟には他の軍衣と同様にホックが設けられています。両脇にはボタンで開閉可能な通気孔があります。

さらに、昭和17年制防暑衣2は、昭和13年制を基にした小改修型といえるものです。襟のホックが廃されて開襟での着用が前提となったほか、両脇の開閉可能な通気口が昭和13年制よりも大きくなっています。また、九八式夏衣と同様に脇下に通気孔が新たに設けられました。史料にも「両脇下に通気孔各2個を設く」との記載が見られます。

襟部分です。昭和17年制にはホックがありません。また、私の個体には第1ボタンがありませんでした。縫い付けられていた痕跡は確認できるため、取り外されたのかもしれません。襟には階級章も付属していましたが、その真贋については判別がつきません。

ボタンで開閉できる脇の通気孔です。
昭和17年制は通気孔の蓋が大きく、剣留と干渉しています。また、脇の下にも九八式夏衣と同様に通気孔が空いていますが、この通気孔は昭和13年制には見られません。

右胸の物入のボタン裏には、小さな白いタグが付いたまま残っていました。「ラ5」と読めるようですが、その意味は不明です。このようなタグが残存している点から、本個体は未使用品ではないかと考えられます。

懐に押された検定印です。「中號 昭和十八年製 本廠検定」と読めます。当時の「中號」は、おおよそ現代のSサイズに相当し、身長160cm未満程度の体格に対応しています。

ちなみに、やや脱線しますが、夏衣は開襟状態での着用も認められていたようです。昭和18年に陸軍大臣 東條英機 によって出された「南方作戦地及台湾以外に於ける夏期被服着用に関する特例」3には、「下士官、兵は営内に在りては夏衣の襟を開襟とす」との記載があります。

この特例は、南方や台湾などの酷暑地帯以外における夏期被服の運用を定めたものです。逆に言えば、酷暑地帯において防暑衣などが十分に支給されていない場合、現地判断で夏衣を開襟にして着用する運用が行われていた可能性も考えられます。

一方で、酷暑地帯以外では、防暑衣袴や防暑略衣袴の着用は営内に限られ、公式の場では夏衣の着用が求められていました。特に半袴などは、外見上の問題や規律の観点からか、人目のある場での着用は控えるよう指導されていたと考えられます。

さらに興味深い点として、現代の感覚では沖縄も酷暑地帯に含まれそうですが、当時の区分ではそうではありませんでした。沖縄戦の写真において、日本兵が防暑衣ではなく夏衣を着用し、襟を締めている例が見られるのは、こうした運用の影響によるものと考えられます。

南方作戦地及台湾以外に於ける夏期被服着用に関する特例

将校准士官下士官兵
防暑衣着用可着用可
防暑袴営内に限る営内に限る
防暑略衣営内に限る営内に限る
防暑略袴営内に限る営内に限る
夏衣の開襟記載なし(禁止と推定)営内に限る

レプリカの紹介

左側が実物、右側のやや緑がかったものがレプリカです。一点ずつの個人製作であることや需要が不透明であることから、今回は市販の生地を使用して製作しています。
できる限り実物に近いものを選定していますが、ご覧の通り、やや緑味が強い仕上がりとなっています。一方で、手に取った際の質感や重量感、厚みについては、実物に近い仕上がりになっていると考えています。

サイズについては、現代日本人のMサイズよりやや大きめのMLサイズ相当で製作しています。今後、需要があればLLサイズの展開も検討していますが、その場合は型紙から新規に作成する必要があるため、一定のお時間をいただく見込みです。

以下の寸法に収まる方であれば、MLサイズで問題なく着用できると思われます。

  • 身長:166~176cm
  • 肩幅:45cm
  • 着丈:67cm
  • 胴回り:109cm
  • 袖丈:59cm
  • 裄丈:82cm

裄丈(ゆきたけ)とは、首の後ろの中心(襟の付け根)から肩先を通り、手首のくるぶし(小指側の骨)までの長さを指します。サイズ選びの際は、袖丈よりも裄丈を優先してご確認ください。
お手持ちのジャケットなど、身体に合っている衣類を平置きして計測すると、より正確に判断できると思います。

LLサイズは肩幅48センチ、身長176から184センチの方向けを予定しています。

できる限りオリジナルのシルエットを再現しつつ、着用性を考慮して一部形状をあえて変更しています。
縫製については、実物よりも丁寧に行っています。実物ではミシン目の飛びや縫い目の歪み、左右の非対称などが見られ、昭和18年頃には熟練工の減少といった背景もあったのではないかと推察されます。

ボタンは3Dプリンタ製(材質:ABS)です。耐熱性が高く、夏場の車内に置いた程度で変形することはありません。別記事でも紹介している通り、下地を含めて4回の塗装後に丁寧な研磨仕上げを行っているため、軽度の擦過で塗装が剥がれることはありません。

サバゲーなどで積極的に着用し、使い込んでいただくことで、より風合いが増していくと思います。洗濯も可能ですが、乾燥機の使用は縮みの原因となるためお避けください。

価格は30,000円です。
ご注文は、Xにて妹のアカウントをフォローのうえ、妹のアカウント宛にDMでご連絡ください。

フリマサイト等を経由せず直接ご注文いただいた場合、日本国内への発送に限り、送料は当方で負担いたします。
なお、海外発送につきましては送料が高額となるため、恐れ入りますがご負担をお願いいたします。
また、妹とは居住地が離れているため、私の出品物との同梱発送はできません。あらかじめご了承ください。

実は、色味に納得がいかなかったため、別の生地でも製作を行っています。
左側が実物の九八式夏衣、右側がレプリカです。こちらはやや濃い色味ではありますが、全体の色調は実物に近い印象です。

着用や日焼けによる退色によって、さらに雰囲気が出てくる可能性もあります。こちらの色味をご希望の場合は、ご注文時にお申し付けください。価格は同一です。

製作風景

脇の通気孔の蓋は、かなり複雑な縫い方がされており、再現には相当苦労したそうです。

脚注

  1. 陸軍服制第5條に依る服制並装具の制式中改正の件」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C01001561600、永存書類甲輯 第1類 昭和13年(防衛省防衛研究所) ↩︎
  2. 3.陸達第18号 昭和5年陸達第8号中左の通改正す 昭和17年4月1日」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C13070890900、陸官調書類綴 (陸達) 昭和17年4月1日~19年1月22日(防衛省防衛研究所) ↩︎
  3. 陸達第44号 南方作戦地及台湾以外に於ける夏期被服着用に関する特例左の通り定む」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C11110065700、第62師団会報綴 (独立速射砲第22大隊受領)(防衛省防衛研究所) ↩︎