下士官兵の拳銃携行法

日本陸軍の下士官兵の場合、特定の兵科や役割を担う兵士は拳銃を携行していました。以下はその例です。

  • 騎兵
  • 戦車兵
  • 憲兵
  • 歩兵の重機関銃手や軽機関銃手

今回の記事では、一般的な下士官兵の拳銃の携行方法を紹介したいと思います。

拳銃嚢の着装手順

まずは雑嚢を右にかけ、水筒を左に掛けます。雑嚢の左端がちょうど体の中央くらいに来るようにします。

通常、水筒は雑嚢と同じように右側に掛けますが、拳銃嚢を身に着けるときは左側に掛けるのが基本です。あくまで「基本」ですので、水筒と同じ右側に掛けている例もあります。

水筒を左側に掛ける場合は、水筒筒(すいとうつつ)の向きを入れ替えて、水筒紐の長さ調整をするバックルが身体の前に来るようにしてください。水筒紐の長さは、帯革(たいかく)を締めたときに口栓の上が帯革の下端くらいにくる長さです。

雑嚢の側に拳銃嚢をたすき掛けにし、拳銃用の細い拳銃帯革を使って胴体に固定します。拳銃帯革は拳銃嚢の裏側についているループを通し、帯革のすぐ上あたりに巻きます。拳銃に装着した縣紐(けんちゅう)1をにたすき掛けにし、拳銃を拳銃嚢に収納します。

前から見たところ。縣紐は右脇の下辺りで絞っておきます。

左の写真は、拳銃嚢が雑嚢の上にある状態、右の写真は拳銃嚢を腰の横辺りに持ってきてある状態です。当時の写真を見ると、腰の辺りに持ってきている状況もよく見かけます。実際、右側の方がすぐに取り出しやすいです。

十四年式拳銃と二十六年式拳銃の違い

先ほどの例では、十四年式拳銃を使用して着装方法を見てみました。二十六年式拳銃の場合も基本的には同じですが、二十六年式拳銃の場合には、拳銃帯革に予備の弾を入れる弾盒を装着します。

以下の写真が、二十六年式拳銃の弾盒(レプリカ)です。逆に言うと、十四年式拳銃を着装する場合は、弾盒は装着せずに拳銃帯革のみとしてください。

左が十四年式拳銃、右が二十六年式拳銃を着装した状態。当時の写真を見るとき、拳銃嚢が映っていなくても、この弾盒の有無でどちらの拳銃を身に着けているかが推測ができます。

拳銃負革の長さ調整

実際の拳銃嚢の着装方法を紹介してきましたが、実際に自分でやってみると、拳銃負革をかなり短くする必要があることに気が付くと思います。特に、現代のレプリカ品は、体格の大きい方でも身に付けられるよう、負革などはかなり長く製作されています。

以下の写真は、HIKISHOP製の十四年式拳銃嚢を新品の状態で肩にかけてみた写真です。これでは、一番短い状態に調整したとしても、だらしなく垂れ下がってしまいます。

このような場合、負革に新しい穴を開けて調整を行う方が多いと思うのですが、それでは帯革の穴の数が変わってしまいますし、あまり見栄えが良くありません。こういう場合は、思い切って負革を短く切り、鼓釦(つづみぼたん)の穴を再生させる工作がお奨めです。

こういった工作は、レザークラフトの入門としてもよい練習になります。この趣味をやっていると、多少の革工作ができるようになると、破損した実物の修復などもできて、幅が広がります。

今回使用する道具はこちら

  • 穴を開けるためのポンチ(5mm)
  • ポンチを開けたりするためのゴムマット
  • ポンチを開けるための木製ハンマー
  • よく切れるカッターナイフ
  • 彫刻刀(必須ではないですが、状況によってはカッターナイフより使いやすい)
  • 水で濡らすと消えるペン(裁縫道具売り場にあります)

まずは、自分の身体に合わせて負革の長さを決めます。左の方に引いた太い線のところが、負革を折り返す場所です。そこから更に右の方に8cmほどの部分、ここで負革を切断します。

上が切り取った方の負革です。この右端にある鼓釦を取り付ける穴を、再生していきます。

折り返す部分を水で濡らします。水で濡らすことで、革を折り曲げて癖をつけることができるようになります。

鼓釦を付ける穴を開け、穴の向かって左側の方に切込みを入れます。この切込みの長さが短いと、鼓釦を取り付けるのが大変になりますので、実際に鼓釦を通しながらちょうどよい長さにしてください。

最後に、右端のあまりの部分を適切な長さにカットして、角を取ったら完成です。

こちらが、負革の長さ調整が完成した状態です。格好良く着装できるようになりました。

脚注

  1. ランヤード ↩︎